1.制作者から
パソコンが操作できると、さまざまな面で可能性が広がる時代になりました。 それは仕事ばかりでなく教育あるいは趣味の分野にも深く入り込むようになっています。 ところが、現状では、パソコンの操作をする場合、キーボードでキーを打つ方法を避けては通れません。 そのような背景もあり、パソコンを使用する際の導入ソフトとして、キータイプ練習ソフトは数・種類ともに多くの製品が巷にあふれています。 残念ながらこれまで、視覚障害者向けのキータイプ練習ソフトは、製品が見られなかったのが現状でした。 学習ソフト特有の難しさや、ユーザ数の規模、製品としての収益性の低さがその一因だったと思われます。
「キーぼうず」は、従来のキータイプ練習ソフトが画面表示によって使用者に伝えていた内容を音声で説明することにより、視覚障害者がキータイプを一人で学ぶことができるソフトです。
「キーぼうず」では、キーの位置、打つ順序を確実に覚えることを基本方針としています。 一般のキータイプ練習ソフトにみられる、ゲームを利用したスピード重視の方式はあまり志向していません。 文書を作成することがキータイプの最終目標ですし、実際に文書を作成していく中でキーを打つスピードはゆるやかに向上していくものです。 「キーぼうず」を早く卒業し、文書をたくさん作成することが何より一番です。 (その時も、たまには「キーぼうず」をさわってあげてください。)
また、視覚障害者には「マウス操作は無理」との声が根強いのですが、敢えてマウス操作を採用しています。 キーを打つ動作は、純粋にキーの名称・位置・打つ順序を学ぶために行い、パソコンの操作はキーに求めず、マウスによる操作で実現しています。 今後、視覚障害者にとって、より使いやすいマウスの操作方法が考え出されてゆくことを期待しています。
「キーぼうず」は、障害者と健常者への同等のサービス提供を意図した「ユニバーサルデザイン」は必ずしも志向していません。 視覚障害者優先でデザインされています。 (大きな文字表示と音声ガイドにより、高齢者のかたにもご利用いただけます。) ところが、音声を使用したキータイプの練習は、健常者にとっても十分効果が得られるのではないかと考えています。 何かしらの行動ができるようになること、あるいは知識のしくみ(枠組み)が理解できるようになることを「学習」と呼んでいます。 キータイプを学ぶ場合の通常の「目で見て」「頭で考え」「指を動かす」という一連の協調動作に、新たに「音を聞く」という動作が組み込まれることによって、この「学習」が効果的に進むことが予想できます。 健常者の皆さまにも十分ご利用いただけると考えています。
高齢化社会が進む中、年を重ねると、やがては誰もが多かれ少なかれ障害とともに生きていくことがごく自然なライフスタイルになっていくと考えることができます。 パソコンは、生きていく上で遭遇するさまざまな肉体的な、あるいは社会的な障害を乗り越える(サポートする)ための大きな道具にもなり得ると思います。 「キーぼうず」が、その一助となることを願っています。
それでは、「キーぼうず」をお楽しみください。
2000年12月1日 「キーぼうず」制作者